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畜産
2025.11.20
~分娩前後のカルシウムの効率的な吸収のために~
日常、飼料を給与される中で…
重要な栄養素のひとつであるカルシウムを効率的に吸収させ、かつ低カルシウム血症 を予防するためには、どのようにカルシウムを給与したらよいのでしょうか?

牛は高齢になるほどカルシウムを吸収しにくくなるため、1回の分娩で失われたカルシウムの量をどこかで補充してあげる必要があります。乾乳期にカルシウムを供給する方法は容易ではありませんが、1日当たり約18~23gの吸収カルシウム※が必要となります。そして分娩に近づくと、さらに必要となります。したがって、分娩後数日間は特にカルシウムを摂取させることが重要となるのです。

分娩が近くなると特に多くのCaが必要になりますが、その大部分は骨に蓄えたCaを動員して補っています。このとき重要なのが、副甲状腺ホルモン(PTH)の働きです。PTHがスムーズに働くようにするためには、分娩1か月前からのCa給与を控えめにし、骨から血中への動員を促すことが有効です。また、イオン・バランスを整えた上でCaを継続的に給与する方法もあります。さらに分娩後に不足分を集中的に与える方法も効果的です。

乾乳期から分娩にかけて体内に多くの陽イオン(カチオン)例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)が存在している場合は、カルシウムをいくら与えても、あまり効果的ではなく、吸収の妨げになるおそれもあります。したがって、分娩1ヶ月前から陰イオン(アニオン)例えば、イオウ(S)、塩素(Cl)を多めに給与し、陰イオンが陽イオンより多い状態で給与することが望ましいでしょう。重曹、塩等の給与量を考慮された上で、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムの給与を行うとよいでしょう。ただし、これらは嗜好性が良くないため、乾物摂取量を落とさずに給与することが重要になります。


分娩前後の母牛は、消化管の機能が低下しやすくなります。したがって日頃から良質な乾草などを自由に給与できる状況を整え、ルーメン環境を安定させることで消化吸収を維持させる必要があります。
※NRC飼養標準2001から体重680kg、BCS3の牛に例示飼料を給与した場合の必要量を算出。吸収カルシウムとは牛が吸収出来るカルシウム量で給与量ではありません。